なりゆきで始まったリンとGの(リンが先!)数学夜話も、咲ちゃんとAが加わって盛り上がりを見せている。
方程式の話から始まって、複素数、三次方程式、四次方程式、リゾルベント、解の入れ替え、代数体・・・
気がついたら、ずいぶん遠いところまで来ている。
今、目指しているのは五次方程式。
なぜ五次方程式は解けないのか?
その理由を探るため、方程式の背景にある数の範囲、体について目を向けているところ。
凛「でも驚きだよ、数なんて、ただ順番に並んでるだけだと思っていたら、実はウニになってたんて。」
咲「ウニ?」
凛「あたしの中のイメージでは、ウニに決定。」
咲「・・・ユ、ユニークだね。」
A「どんな形であれ、イメージを持つことは大切だよ。
数学そのものは透明で、何のイメージも持たない。
そこに血を通わせるのは、一人一人の持つイメージだ。
イメージは人それぞれに違っているし、学校でまとめて教えることもできないしね。」
凛「そうそう、だからイメージはおもしろいんだよ。」
G「マスターが、“おもしろい”という言葉を口にするとは・・・」
Gが感深げに見守っている。
もう、ため息はつかなくなったみたいだ。
凛「い、いやだな、もうっ。」
・・・照れてしまった。
G「さて、数というものは、ただ順番に並んでるだけではない。
数の中には、無限の構造が潜んでいる。
方程式と比べてみることで、数の中に潜んでいた構造が浮き彫りにされる。
ここでちょっと数の種類についてまとめておこう。
マスターは、数の種類といったら、どんなものが思い付くかな。」
凛「種類って、整数とか、分数とか、そういうの?」
咲「えっと、整数、小数、分数・・・あと、有理数、無理数。」
凛「あれ、分数と有理数は、同じものだっけ?」
G「分数までの範囲をまとめて有理数と呼んでいる。
小数は分母が10の倍数になっている分数と同じことだし、
整数は分母が1の分数と同じことだから、全部まとめて有理数だ。」
A「まとめて書いてみようか。」
・自然数 N(Natural Number) 1, 2, 3 ・・・
・整数 Z(Zahlen ドイツ語) ・・・ -2, -1, 0, 1, 2, 3 ・・・
・有理数 Q(Quotient 割り算の商の意味)
小数 1.25, 0.98 など
分数 1/3,
無理数
代数的無理数 √2, 3√5 など
超越無理数 π, e など
・実数 R(Real Number)
(↑有理数と無理数を合わせた全体が実数)
・複素数 C(Complex Number) 2 + 3i, 1 - √3i など
(純虚数 5i など、実数部が0の複素数)
超複素数
四元数
八元数
十六元数
A「代数方程式で扱う数の範囲は、複素数までだね。
複素数を拡張した数に、四元数や、八元数といったものもあるけれど、
そういった数の話は、また別の機会にしよう。」
凛「ほえー、数ってたくさんあるんだー。十六元数なんて、初めて聞いたよ。」
咲「よく見ると無理数の中に、代数的無理数と、超越無理数の2通りがありますね。」
A「実はそれが、方程式との関係で重要なところなんだ。
代数的無理数というのは、代数方程式の答になっている数のこと。
超越無理数というのは、代数方程式の答にならない数のことなんだ。」
咲「πとか、e とかが超越無理数なんだ。」
凛「√とか、冪乗根が代数的無理数ね。
確かに、こういう数って自分同士の掛け算から出てきてるんだから、代数っぽいよね。」
G「代数的というのは、加減乗除と冪乗、冪根の操作のことだ。
これまではっきりと言わなかったが、代数方程式というのは
a x^n + b x^(n-1) + c x^(n-2) ・・・ v x + w = 0 (係数は全て有理数)
といった形の方程式のことだ。
これ以外の形、例えば Sin(x) - 1/√2 = 0 といった方程式は、代数方程式ではない。」
咲「数の範囲で比べたら、どっちの方が多いのかな?
超越数って、なんかとっても珍しい数っていう気がするんだけど。」
G「超越数の方が、圧倒的に代数的無理数よりも多い。」
凛「え、多いって、どうして? どっちも無限にあるんじゃない?」
A「実数の中から無作為に1つだけ数を取りだしたら、ほとんどの場合、超越数になるってことだね。
代数的数はきちんと整理して表にして並べることができるけれど、超越数は一覧表にして並べることができない。
なので、表からはみ出している超越数の方がたくさんあるっていう理屈なんだ。」
凛「む、むずかしいのね。」
咲「大丈夫だよ、凛ちゃん。
代数方程式だったら、とりあえず代数的数のことだけ考えていればいいんだよ。」
G「その通り、代数方程式の答は、全て代数的数だ。
しかし数の中には、代数的数ではない、超越数という数もある。
それだけ知っていれば、当面は充分だろう。」
凛「うー、数ってますますたくさんあるような気がしてきた。もうウニウニ。」
G「いままで話してきた体の概念も、この代数的という条件と密接に関わっている。
そこのところを強調して“代数体”と言うことがある。」
凛「いままでも何気に言ってたよね。」
G「少し注意が要るのは、虚数単位iも代数的数だということだ。
虚数は冪根で作られるし、代数方程式の答にもなっているだろう。」
咲「あ、そうか。だったら代数的複素数と、超越複素数っていうのもあるのかな?」
A「π+ei なんていうのは、さしずめ超越複素数ってことになるね。」
G「さて、その複素数についてだが、複素平面にはちょっとおもしろい、特別な性質があった。
それは“iと−iを入れ替えても、意味が全く変わらない”という性質だ。」
咲「入れ替えても、意味が変わらないって、、、」
凛「たとえば咲ちゃんの思っているiが、私の思っている−iだったとしても、
そのことに全然気付かないってことだよ。」
咲「あれ、そうなのかな? 。。。そっかー、iってどっちでもいっしょなんだー。」
G「このように、入れ替えても全く意味が変わらない体同士の関係を、“体の同型”と言う。」
咲「同型って、同じ形だってことかしら。」
凛「複素平面だったら、実数軸を中心にパタンって折り返すと、ぴったり重なるってことだよね。」
G「ぴったり重なるということをもう少し正確に言うと、2つの体の間に1対1の写像があるということだ。」
2つの体KとFが同型であるとは、KからF上へ、次に示すような1:1の写像fが存在することである。
K上の足し算が、F上での足し算になっている。
f(a + b) = f(a) + f(b)
K上の引き算が、F上での引き算になっている。
f(a - b) = f(a) - f(b)
K上のかけ算が、F上でのかけ算になっている。
f(a・b) = f(a) ・ f(b)
K上の割り算が、F上での割り算になっている。
f(a / b) = f(a) / f(b) (ただしf(b)=0 は除く)
凛「体が四則演算できる範囲のことだから、写した先でも四則演算できるってことだね。」
咲「それで、KもFも自分自身、自分から自分へのコピーっていうときには“自己同型”になるんですね。」
凛「・・・ってことは、複素数じゃなくても、普通の数にだって自己同型があるんじゃないかな。
だって、数直線って、反転させてもぴったり重なるよ。
もとの数を、全部マイナスにしてみるとか。」
A「残念ながら、それだと足し算、引き算はうまく重なっても、掛け算、割り算がうまく重ならないだろう。
有理数Qの場合、自己同型写像は、何も動かさない恒等写像だけしか無いみたいだね。」
凛「・・・しゅん。」
A「でも、複素数以外の体にも同型があるってところは、間違っていない。
例によってQ(√2)で考えてみてごらん。」
咲「複素平面のまねをするなら、“有理数x√2平面”だよね。
だったら、√2を−√2に置き換えても、ぴったり重なるんじゃないかしら。」
凛「試しに置き換えてみて、同じ計算になっていればいいんだよね。
足し算、引き算: (1+√2) + (2+3√2)= 3+4√2
=[置き換え]=> (1−√2) + (2−3√2)= 3−4√2
掛け算: (1+√2) (2+3√2)= 8+5√2
=[置き換え]=> (1−√2) (2−3√2)= 8−5√2
割り算: 1 / (1+√2) = -1 + √2
=[置き換え]=> 1 / (1-√2) = -1 - √2
ほんとだ、√2と−√2を入れ替えても、式の形は全くいっしょなんだ。」
G「つまり、体Q(√2) と Q(−√2) の間には、同型写像があるということだ。
そして、この2つの体Q(√2) と Q(−√2) は、数の集合としても同じものだ。
例えば 0 - √2 という計算によって -√2 が作れるし、
0 - (-√2) で +√2 を作り出すこともできる。」
凛「じゃあ、√2 でできることは、√3 だって同じだよね。」
咲「Q(√3)の中で、√3 を -√3 に入れ替えても、計算規則は全く同じですよね。
だったら、Q(√2, √3)はどうなるのかしら?」
凛「√2 にマイナス付けるのと、√3 にマイナス付けるのの、2種類あるんじゃない。」
A「空間の広がり方をイメージしてごらん。
Q(√2, √3) は、有理数Qの軸、√2成分の軸、√3成分の軸、√6成分の軸、の4次元空間になっているだろう。」
咲「それならイメージが湧きます。
入れ替えの方法って、きっと4パターン。
・√2, √3 両方そのまま。
・√2 => −√2に入れ替え。
・√3 => −√3に入れ替え。
・√2 => −√2に入れ替え、そして、√3 => −√3に入れ替え。」
G「その通りだ。
今の場合は、4次元空間を鏡像反転したイメージで捉えることができる。」
凛「√6軸の入れ替え、っていうのは無いのかな?」
A「√6だけマイナスにして、√2, √3 両方そのままっていう操作は苦しいね。
√2x√3という計算をどのように扱ったら良いのか困ってしまう。
例えば
√2x√3+√6 = 2√6
置き換えた計算
√2x√3−√6 = 0
で、同型にはならないよ。」
凛「うーん、イメージだけで考えてもダメなのか。」
G「もう少し別の例も見てみよう。
1の三乗根を添加した、Q(ω)の自己同型はどうなっているかな?」
凛「ωって、x^3 = 1 の答になってるんだよね。
だったら、空間は3次元に広がってるのかな。
確か Q(ω)上の数って、a + b ω + c ω^2 てな形で、a, b, c 3つの数で表せるんじゃなかったっけ。」
G「ところがこの場合、空間の広がりは3次元ではなくて、2次元になる。
なぜかというと、ω=(1+√3i)/2 と、ω^2=(1-√3i)/2 を使って、1という数を作ることができるからだ。
-(ω + ω^2) = 1。
だから、b ω + c ω^2 だけで、Q(ω) 上の全ての数を表すことができる。」
凛「えー、いじわるー。」
咲「でも、確かに ω と ω^2 の2つだけで、実数を表すことができるわ。
ちょっと不思議。」
A「以前、“体の次元は、その数の最小多項式の次数となっている”といったことを覚えているかな。
ωのQ上での最小多項式は、x^3 - 1 = (x-1)(x^2 + x + 1) だから、x^2 + x + 1 で、2次式なんだ。
だから、体の空間の広がり方は2次元。」
咲「でも、さっきのQ(√2) とは、だいぶ違う感じに思えるけど。。。
だって、ωだけそのままにして、ω^2 だけマイナスに反転って、できるかしら?」
凛「ちょっと待って、よく見ると、ω = (1 + √3i)/2、ω^2 = (1 - √3i)/2 だよ。
だったら、√3i のところだけプラスマイナス入れ替えればいいんじゃない?」
G「そう、実はQ(ω) = Q(√3i) だ。
だから、体の同型写像は √3iを -√3i に入れ替えたようなものになる。」
凛「3って付いてるから、だまされたー。」
G「別にだましたわけじゃない。
それではもう1つ、Q(3√2, ω) という体の自己同型はどうなっているだろう。
これは、x^3 - 2 = 0 の最小分解体だ。」
咲「えーと、この方程式の答は、3√2, 3√2ω, 3√2ω^2 の3つなんですね。
さっきみたいに、√3iを -√3i に入れ替えれば、ω と ω^2 が入れ替わると思うけど。」
凛「でも、それだけじゃなくって、おまけに3√2 が付いてるよ。
体Q(3√2) の数って、今度こそ a + b 3√2 + c 3√2 ^ 2
って感じに、3次元になってるんじゃない?」
G「今度こそ、拡大次元はωで2次元、3√2 で三次元、両方合わせて 2・3 = 6次元になる。
特におもしろい形をしているのが、3√2 の三次元の方だ。
3√2 を 3√2^2 に単純に置き換えても、体の同型にはならない。
しかし、3√2 を 3√2ω に置き換えれば、これは体の同型になっている。」
凛「むぎゅうー、ぜんぜんイメージ湧かない。。。」
G「ωずつ掛け算すると、順番に回ってゆくんだ。
わかりやすく 3√2 = α と置くと、こんな感じだ。」
α → α ω → α ω^2 → α
咲「三角形に、グルグル回っているっていう感じですね。」
凛「・・・そういえば、ωの掛け算って、複素平面上で正三角形っぽく120度ずつ回転するんだっけ。」
G「それがこの場合、形になって体の同型写像に表れているんだな。」
凛「でも、どうしてただの Q(ω)だと2次元なのに、
Q(
3√2, ω) だと三角形に回るのかな?」
A「Q(ω) のときに巡回する経路は、
1 → ω → ω^2 → 1
ということになのだろうけれど、体の同型を考えたとき、1という数をωに入れ替えられそうにないからね。
どうしてもわからなくなったときは、最小多項式を手がかりにするといい。
x^3 - 1 は、(x - 1)(x^2 + x + 1) と因数分解できるけれど、
x^3 - 2 は、もうこれ以上分解できない。
そこが本質的な違いだ。」
凛「Q(ω)が二次元の鏡像反転、Q(
3√2, ω) が6次元になって、三角形にぐるぐる回ってる・・・
なんか、すごいことになってる。」
G「空間の次元で言えば、6次元のうちの3本の軸を交換する、といったイメージだろう。
まとめると Q(
3√2, ω) の同型写像は
α → α ω → α ω^2 の系列と、
ω → ω~ (√3iを -√3i に置き換える)系列
の組み合わせで、全部で6パターンある。」
咲「そういえば、Qに ωを加えずに、
3√2 だけを加えたときはどうなのかしら。
Q(
3√2) っていう体の同型は、、、」
A「その場合、体は3次元に広がるのだけれど、同型写像は何も無いんだ。」
咲「あら、いつでも同型があるわけじゃないのね。」
A「試しに
3√2 を -
3√2 に写してみても、2乗したときにおかしくなるだろう。
いまの場合も最小多項式を考えてみれば、x^3 - 2 となるはずだ。
ところが、Q(
3√2) という体は、x^3 - 2 という式の全部の答をカバーしていない。
こんな風に、方程式の答の一部だけしかカバーしていない中途半端な体は、自己同型写像を考える意味に乏しいんだ。」
咲「なるほどね。
体って、もともと四則演算できる数の範囲なんだから、方程式といっしょになって初めて意味があるんだ。」
G「そう、大事なのはそこだ。」
咲「えっ、えっ?!」
G「方程式といっしょになって初めて意味がある、ということだ。
ただ方程式の字面だけ眺めていても見えてこなかった“形”が、背後にある代数体に目を向けると、見えてくる。
代数体の形というのは、空間の鏡像反転だったり、回転する三角形だったりするわけだ。」
凛「体の“入れ替えパターン”ってことだね。」
G「いま、体について重要な概念が2つ出てきた。
1: 代数体って、方程式といっしょになって初めて意味がある。
2: 代数体の形というのは、空間の鏡像反転、回転する三角形などの“入れ替えパターン”ってこと。
よくわからなくなったら、とにかくこの2点を思い出せ。」
G「まず、“1:代数体って、方程式といっしょになって初めて意味がある”ところからだ。
一番簡単な x^2 - 2 = 0 を考えてみよう。
この方程式の答は +√2、-√2 の2つだ。
この2つの答を見て、気付くことは無いか?」
咲「えっと、√2を−√2に置き換えても、体の形は変わらない、のかな。」
G「良い着眼点だ。
方程式の2つの答が、ちょうど体の同型で入れ替えても変わらない数になっている。
これは偶然だろうか?」
凛「方程式の答が、ちょうど体の同型になっている・・・
でも、もっと他の方程式だったらどうかな。
例えばQ(√2)で解ける方程式って、えーと、えーと・・・」
A「例えばこんなのはどうかな。
x^2 - 4 x + 2 = 0
この方程式の答は 2 - √2、2 + √2 の2つだ。」
凛「あ、ほんとだ。 +√2、-√2 を置き換えた形になってる。」
咲「よく考えてみると、二次方程式の答って、必ず p ± q √r になってますよね。
だったら、Q(√2) で解ける方程式は、いつでも p ± q √2 って形になるんじゃない?」
凛「うわ、本当だ。
やっぱり√2を−√2に置き換えたことになってる。
ってことは、二次方程式だったら、2つの答はいつでも体の同型の先に写るんだ。」
G「1つの代数方程式の、異なる複数の答を、共役数と呼んでいる。
そして、体の同型写像は、方程式の答を共役数の上に写すのだ。」
凛「体と方程式がいっしょになっているって、そういうことだったんだ。
方程式の答の数だけ、体の“入れ替えパターン”があるって感じなのかな。」
咲「そういえば、複素数で a + b i、a - b i っていう2つの数のことを、共役複素数と言ってますよね。」
A「うーん、数学ではいろんな意味で共役って言葉を使っているから、本当はちょっと意味が違うんだ。
でも、二次方程式だと、たまたま共役複素数が共役数になっているね。
x^2 + 1 = 0 という方程式の2つの答は、iと -i という共役複素数だ。」
咲「なんか、ややこしいなあ。
この場合はQ(i) 上で、iを -i に置き換えるのが自己同型写像ってことですね。」
凛「だんだんわかってきたよ。
二次方程式には、鏡に映したような2つの答がある。
そして数にも、鏡に映したような同型写像がある。
だから、二次方程式は、鏡像のような数の上で解くことができる。
・・・以前言ってたことの意味が、わかってきた。」(数学夜話 第2回)
G「全ては1つにつながっている。
以前、話したことも、今、考えていることも、最後には全てがつながって1つになる。」
全てが1本の論理の糸でつながっている。
あと少しで、その全てが見えてくるんだ。
G「もう1つ、
x^3 - 2 = 0
という方程式の場合はどうだったろう。」
凛「ええと、3つの答がぐるぐる回ってる。
α → α ω → α ω^2 → α (α = 3√2)
これって、体の同型と全く一致していたんだよね。」
咲「あと、√3i から -√3i への置き換えも、やっぱり共役数同士の入れ替えですね。
でも、方程式の答と、体の入れ替えが同じことなんて、なんか不思議だなぁ。」
A「たしかに、方程式と体が表裏一体というのは、神秘的にすら思えるね。
でも、落ち着いて考えてみれば、ちゃんと理にかなったことなんだ。
・方程式の複数の答は、方程式にどれを入れても同じ値となること。
・体の同型写像では、0を0に写すということ。(掛け算を考えれば、そうなる)
この2点について、よくよく考えてみてごらん。」
G「式を書いてみれば、はっきりするだろう。」
* なぜ、体の同型写像は、方程式の答を共役数の上に写すのか?
いま考えている方程式を G(x) = a x^n + b x^(n-1) + c x^(n-2) ・・・ = 0 とする。
ある数 x に対する、体の同型写像をf(x) とする。
方程式全体に同型写像を施すと
f( G(x) ) = f( a x^n + b x^(n-1) + c x^(n-2) ・・・ )
体というのは、同型写像で写しても四則演算ができる、ということだったから、
= a f(x)^n + b f(x)^(n-1) + c f(x)^(n-2)・・・
ということは、 f( G(x) ) = G( f(x) ) = 0 ということ。
つまり、もともとの方程式の x に同型写像fを施した結果も、同様にもとの方程式を成り立たせている。
咲「うわー、もう頭がついてゆけないよー。」
凛「・・・方程式なんて、わけわかんない記号をいじくり回して、
何か数えてるのかなって思っていたんだけど、、、全然違ってた。」
咲「そうだねー。
目に見えない複素平面とか、空間とかの形を想像していたんだね。」
凛「なんか、すっごい想像力。
数学って、もっとコンピューターみたいな計算ばっかりやってるんだと思ってた。」
A「ははっ、計算機にできることは、計算機にやらせればいい。
数学に最も必要とされるのは、計算力なんかじゃなくて、想像力だな。」
G「見えないものを想像する力、現実に無いものを想像する力。
それが形になったとき、初めて新しい風景が見えてくる。」
凛「・・・すごいんだー。」
A「でも、リンにも、咲にも、新しい風景が少しずつ見えてきているんじゃないかな。
“すごい”と感じていることが、その証拠だよ。」